INTERVIEW インタビュー

監督、シリーズ構成|柿本広大

①本作に対する意気込みを教えてください。

応援したいって、どんな気持ちから生まれるんでしょう?
普段気にもしてなかったことが応援になっていたり、頑張ってる人を見て勇気づけられたり。
「応援」をキーワードに生まれた物語です。
ご覧になって、ちょっとだけ元気になってもらえたら、みんな喜ぶ。
そんな作品になっていれば良いなと思います。

 

②あなたにとって「応援」とは何ですか?

この作品を通してさまざまな取材をしました。
協力して頂いた皆様の向き合い方、真剣さにまさに力を貰いつつ、応援する人もされる人も十人十色。
でも共通していたのは、気持ちを分けてもらったこと。
応援って気持ちのお裾分けなんだなと思いました。

 

【「菜なれ花なれ」本編について】

本作で好きなキャラクターとその理由を教えてください。

基本的には“どのキャラクターが好き”というのはあまり考えないようにしていて、登場人物は満遍なく、みんな主人公だと思って作っています。
どのキャラクターにも思い入れができるようにエピソードを入れ込んでいるので、全員が推しです。

 

 

ご自身が「ここを見てほしい!」と感じるポイントはどこですか?それはなぜですか?

まず話の流れの中で、キャラクターがそれぞれどう変化していくのか、誰が動くことで誰の心が動くのかという人間関係に注目して見ていただきたいです。

絵的な部分ではやっぱりチアシーンですね。
曲もダンスも今回のために作っていて、チアクリエーションさんに細部まで監修していただきながら制作しました。

あとは、背景と色彩にも是非注目してください!
美術監督の竹田さん、色彩設計の中野さんと一緒に新しい試みに挑戦しています。
美術ではひと目で「菜なれ花なれ」だとすぐ分かるようなビジュアルと、群馬の綺麗な自然や日差しなど光の表現を独特な描き方で作ってもらい、色彩設計もそれに合わせて調整していただきました。
他ではちょっとないような特異なレベルで、美術と作画が調和しているところをぜひ見ていただきたいです。

 

 

【仕事内容編】

あなたにとって「監督」はどのようなお仕事だと考えていますか?

物語を考え、設定を考えて、それをスタッフと共有し、いろんなセクションと連携を取りながらフィルムを完成まで導く仕事です。
各スタッフにその作品の面白さを伝え、理解し共感してもらうことは監督にしかできないことだと思っています。
いつも100%で仕事をされているスタッフに、この作品のためだったら120%頑張ってみようと思ってもらえることが、本編を更に面白くすることに繋がると思っています。

 

 

監督のお仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

自分が一番この作品を面白いと思えること。
その根拠を作品の中に埋め込んでいくこと。
それをスタッフに伝えて共有すること。

 

 

お仕事をしていて面白いと思う瞬間はどこですか?

スタッフやキャストの方々が、こちらの想定を超えて内容を盛り込んでくれた時や、視聴者の皆様が作品の内容を深く吟味して、各々の楽しみ方を見出していただけているのを見た時です。
制作していると、キャラクターを深く理解しているからこそ出てくる表現に出会うことがあって、あー! やってくれたな! 嬉しいなって思いますし、オリジナルアニメだと、話の展開などを想像して楽しんでもらえる事が多く、こちらが思ってもいなかったような結論にたどり着いている方がいらっしゃるのを見ると楽しくなります。

 

 

本作の企画立ち上げのときの狙いを教えてください。

僕がこの作品に参加したときに「応援」と「チア」を題材とすることは決まっていたんですが、「チア」は今まで全く触れたことがなくて…
今まで作ってきたものは何かしら知識だったり、好奇心を持って調べたことがあるものがモチーフだったりしたんですけど、今回は自分の中に持ち出すネタがなんにもない状態でしたので、チアをやっている高校生に直接取材したり、群馬に何度も行ったりして、自分の中には無かったものだけで作品を作り上げるというのは意識して挑戦してみました。

あとは、チアのハイテンションなノリについていけないキャラクターがいたり、「応援」のネガティブな面も恐れずに描くことで、応援について、自分が今まで考えたことのなかったような視点も含めつつ多角的に考えながら制作していきました。

 

 

本作ならではのこだわったところ、大変だったところはありますか?

キャラクターデザイン

チアという団体競技を知る中で衝撃を受けたことに、選手の体格差が重要な、決して無視できない要素になるということがありました。
小学生から中学生になったときに急に身長が伸びてトップができなくなったり、誰もが納得しているわけではないけど、それでもチームのために頑張る人がいたり。
そういうシビアな面をちゃんと描きたいと思い、キャラクターごとに体格も全部違うようにしたいとお願いしました。

 

キャラクターの立ち位置

「チア」という軸をいろいろな角度から見るために、キャラクターの立ち位置を意識して作っていて、チアど真ん中のかなた、チアに届かなくなってしまった恵深、プレッシャーになるから応援されたくない穏花などを描けたのはこの作品でやりたかったことの一つでした。

 

チアの描写

美を競う競技なので、ディテールに神が宿るどころではなかったです。
チアクリエーションさんより丁寧な監修をいただき、ほぼほぼ完成していると思えていた状態からも手の角度を修正したり…“偽物を出してもしょうがないんだから、やるしかないでしょ!”と制作プロデューサーと相談しながらこだわりを持って作りました。

 

挿入歌

話の流れとのリンクを考えながらも、“メンバーが作っている”という設定があったので、そこから心情が離れないよう気を付けて発注しました。
あと、HIPHOPとか結構聞きました。
演奏するための音楽ではなく、あくまでチアのBGMとしての音楽なので、どのように曲を作り演奏するのか、音楽チームと一緒に考えていきました。

 

劇伴

作品としての統一感を求める方向ではなくて、いろんな音楽のジャンルから作ってほしいとオーダーしました。
音響監督の伊藤さんとも、「PoMPoMs」っていう団体の色があるんじゃなくて、バラバラの色や音の個性が混じって「PoMPoMs」になる、ということを意識していきましょうなどと話していました。

 

 

制作プロデューサー、メーカープロデューサーとの会話の中で印象的だったエピソードがあれば教えてください。

制作プロデューサーの小西さんに、もう一歩、もう半歩だけでもリテイク頑張れないかと相談したら、必ず一回全部飲み込んでくれるところが印象的でした。
状況が見えていて、ここで終わらせないといけないのがわかっていても、なんとか工夫して一回やってみるというのをすごく真摯にやってくれたので彼のことはとても信頼しています。

メーカープロデューサーの皆様も、粘り強く作品に携わっていただきました。作品を好きでいてくれて、何より楽しんで一緒に作ってくれているというのが伝わってきて、放送前にもその気持ちが視聴者の皆様にも伝わるくらい熱心にプロデュースしていただき、とても頼もしかったです。

 

 

各セクション(作画、仕上げ、撮影、美術など…)とのやりとりの中で印象的だったエピソードがあれば教えてください。

美術監督の竹田さんと一緒に群馬にロケハンに行ったら、早々にコンテに合わせて写真取り始めてくれたのが印象的でした。おかげでより素敵な名所を見つけてコンテから場所を変えたというエピソードもあります。

あとは、直接会ったわけではないですけど、動画検査さんや、仕上げさん、トレスペイントで修正を根気よくやってくれたクリエイターの方々には言葉では伝えきれないほど感謝しています。

撮影監督の朝日さんも今作が初めての撮影監督とのことだったのですが、独特な絵面の素材のなかで、その素材を生かし切る方向で丹念に撮影処理を盛りこんでいただき、すごくありがたかったです。

 

 

おすすめのお仕事道具や、仕事をするときの必需品を教えてください。

ノイズキャンセリングのイヤホンと音楽ですね。気分によって音楽のジャンルは変えています。
民族音楽のCDとか聞いてみたり、聞いたことないジャンルを開拓してみたりしています。

あとは、会議や編集作業中とかのちょっとインターバルがあいたときに気が散って集中が切れないように、繋ぎでフリーセルをずっとやってます!
現場で僕がフリーセルやってるのを見たら、遊んでるんじゃなくて集中力切れないようにしてるんだなって思ってください笑

 

 

今後お仕事の中で挑戦してみたいことはありますか?

ひとつひとつ作品ごとに挑戦してみたいものを変えています。
作品が決まったら現場や人を見て、こうやってみよう!と決めてやっているので、次に何やるか決まったところでまた考えます!

 

 

本作をどんな人に見てほしいですか?

皆さんに見て頂きたいのは勿論ですが、特にお仕事などでお疲れの方には是非見て頂きたいです。
元気があればまだ見ていて辛い作品でも1週間頑張れると思うんですけど、お疲れの方にはあんまり見ていて辛い作品を持ってくると1週間しんどいかなって笑
分かりやすい癒やしの作品というよりは、日常を少し応援できるような作品に出来たかなと思っています。